【ネタバレあり】小説「ユリゴコロ」沼田まほかる あらすじ・感想

ミステリー

「ユリゴコロ」を読み終えました!
前半がとてもショッキングな内容で、正直読むのが辛い場面もありました…
ですが徐々に愛に満ちた物語に変わっていき、ラストは涙を流しながら読んでいました(泣)

今回は「ユリゴコロ」のあらすじ・感想をネタバレ有りで紹介しますので、
まだ読んでいない方はブラウザバック推奨です!

 

「ユリゴコロ」のあらすじ(ネタバレなし)

婚約者”千絵”との結婚を控えていた亮介。
ところが、”千絵”の失踪をきっかけに幸せであろう未来は崩れ去る。
父親の末期がん発覚、母親の事故死…と立て続けに不幸が度重なり、亮介は絶望の淵に立たされた。
そんな中、父親の書斎で「ユリゴコロ」と題された4冊のノートを見つける。
そのノートにはある殺人鬼の生々しい告白文が記されていた。
一体誰が「ユリゴコロ」を書いたのか…
亮介は過去の記憶と照らし合わせ、「ユリゴコロ」の作者を探すことに
すると衝撃の家族の秘密が明らかになる…!

 

「ユリゴコロ」のネタバレ

「ユリゴコロ」の内容

物語は「ユリゴコロ」の筆者である”私”の幼少期から始まります。

”私”は後頭部にコブがあり、人と喋ることができない子供でした。
母親に連れられて定期的に通院し、医師に「この子には・・・の拠り所が無い」と言われます。
”私”は「拠り所」を「ユリゴコロ」と聴き間違え、それからは「ユリゴコロ」を求めるようになりました。

殺人鬼になったきっかけ

小学生になった”私”は同級生のミチルちゃんの家によく遊びに行きました。
ミチルちゃんの家の庭には井戸があり、”私”はその井戸を覗くと闇に飲み込まれてしまう経験をします。
それからはミチルちゃんの家に行った際は欠かさずカタツムリや虫を井戸に落とすことで、心を落ち着かせるようになりました。

ある日”私”の前でミチルちゃんが庭の池に落ちて溺れました。
”私”は溺れているミチルちゃんを眺め続け、やがてミチルちゃんは死んでしまいました。
”私”は溺れ苦しんでいるミチルちゃんを何度も思い出し、これが「ユリゴコロ」だと確信します。

その後”私”は「ユリゴコロ」を求め、多くの人を殺すようになり
ついには親友まで殺してしまうのでした。

”アナタ”との出会い

元々コミュニケーションを取ることが苦手だった”私”は
大学卒業後に就職した会社を1年で追い出されてしまい、娼婦として働くことになります。

ある日”私”は客として声をかけた男の人にご飯を奢ってもらいます。
男は”私”を抱くわけでもなく、「うまそうに食べるから」という理由で頻繁にご飯を奢るようになりました。

そして”私”は男を”アナタ”と呼ぶようになり、仲が深まっていきました。

”アナタ”の過去

ある日”アナタ”は過去に子供を1人を殺した事があり、そのトラウマで性的不能者になったことを”私”に打ち明けます。
子供が溝に落ちた帽子を拾うために、”アナタ”は重いフタを持ち上げてやったが
フタの重みに耐えきれず、子供の首の上にフタを落としてしまい殺してしまった、と。

しかし実はその子供を殺したのは”私”でした。
フタを持ち上げるのを助けるフリをして、反対にフタを押し下げたのです。

真実を知らない”アナタ”はその事件以降、罪の意識を抱え苦しみながら生きてきました。
しかし”アナタ”に罪の意識が無ければ、”私”にご飯を奢ってくれることも無かったのです。

”私”の妊娠、出産、自殺未遂

”アナタ”に出会ってからしばらくすると、”私”は客との子供を身篭りました。
”私”は子供を産むことなど考えられなかったのですが、
子供を殺した罪を背負っている”アナタ”は「運命」と言い
”私”との結婚を望み、一緒に子供を育てる決意をします。

その後、無事に子供を出産し、”アナタ”を含め3人での生活が始まりました。
”私”は”アナタ”と共に子育てをすることが初めて楽しいと感じ、
またそれが「ユリゴコロ」に近いものだと気付きます。

しかし”私”は数々の殺人を犯してきたことを”アナタ”に言えず、
代わりに「ユリゴコロ」と題したノートに告白文を書くことにしました。

そして警察に捕まり独房に閉じ込められる恐怖と、
”アナタ”に罪の意識を被せてしまったことの罪悪感から
”私”は殺人鬼の血が通っている子供と共に自殺することを決意します。

「ユリゴコロ」の作者は誰なのか?

なんと「ユリゴコロ」の作者は主人公亮介の母親”美紗子”、
”アナタ”とは亮介の父親のことでした。

もちろんノートに記されている美紗子の産んだ子供は亮介です。

「ユリゴコロ」その後

「ユリゴコロ」を書き終えた美紗子は川で入水自殺を図りましたが
間一髪、亮介の父親に助けられて一命を取り留めます。
(美紗子を追いかけ亮介も川で溺れましたが、美紗子は1人で死のうとしました)

その後「ユリゴコロ」を読んだ美紗子の家族は
悩みの末、家族の手で殺すことを決め美紗子をダム湖に沈めました。
そして美紗子の妹である”英実子”が美紗子として生きることになります。
(亮介が幼少期に感じた母親への違和感は間違いなかったのですね)

やがて亮介の父親と英実子の間に弟の洋平も生まれます。

亮介の母親→美紗子
洋平の母親→英実子(交通事故で死亡した母親)

千絵の行方は…?

なんと千絵は既婚者でした。夫の元に帰るために失踪したのです。
そして亮介が経営している喫茶店の店員である細谷さんが
失踪した千絵の身元を調べ、亮介の元に連れ戻してくれました。

千絵の夫”塩見”は借金を抱えており、千絵に乱暴するような男でした。
耐えきれなくなった千絵は夫から逃げ出し、亮介の店で働くことになったのです。

事情を知り怒り狂った亮介は、千絵を追ってくる塩見を殺そうと計画しますが
塩見は何者かに殺害されてしまいます。

その後、千絵は体調が回復し以前のように亮介の店で働くようになりました。

実は生きていた美紗子

実は美紗子は生きていました。
美紗子の両親は実の娘を殺せず、遠い土地へ美紗子を逃したのです。
そして家族に内緒で1年に1度だけ亮介の父親と美紗子は会っていました。

細谷さんの正体

数日しか生きられない体になった亮介の父親を迎えにきたのは、なんと細谷さんでした。
美紗子は名前を「細谷」と偽り、息子である亮介を支えていたのです。

細谷さん=美紗子

千絵の夫”塩見”を殺したのは誰?

亮介が手を下す前に美紗子が塩見を殺しました。
息子の手を汚したくなかったのでしょう。
美紗子が家族を持ってから初めての人殺しでした。

「ユリゴコロ」の感想

正直前半を読んでいる時は、よくあるサイコパスの快楽殺人記録だなあという印象しかありませんでした。
しかし”アナタ”も美紗子に殺されてしまうんだろう…と予想していたところからがどんでん返しでしたね。
本当に面食らいました(汗)

楽しいという感情が無かった美紗子は、愛着ある人を殺すことによって心を満たしていましたが
亮介の父親に出会い、亮介を産み本当の”ユリゴコロ”を見つけます。
この美紗子の”ユリゴコロ”の変化により、愛の溢れる物語へと変わります。

しかし美紗子の犯罪は決して許されるものではありません。
そこを美化させずに、美紗子・美紗子の家族がとった行動が本作の見所だと感じました。

そして何よりラストシーンはとても印象的でした。
亮介の父親は年に1度、美紗子に会っていましたが
美紗子は”死んでいる人”なので決して美紗子に触れることはありませんでした。
しかし最後は躊躇いながらも美紗子の手に触れるのです。
自分も”死んでいる人”という覚悟の表れだったのでしょう。

また最後まで美紗子は”亮介の母親”ではなく”細谷さん”として亮介に接していました。
別れの瞬間も亮介のことを”店長”と呼び従業員として別れを告げています。
最後の最後まで美紗子は死人だという事実を突き通したのですね。
美紗子の罪の意識・子供への愛がよく見えるシーンだったと思います。

ここまで読んで頂きありがとうございました。
「ユリゴコロ」は吉高由里子主演で映画化もされていますので、
気になる方は併せてチェックしてみてください!

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